リングの足跡

WBA世界Jフライ級チャンピオン

 
具志堅用高(協栄)

2日続けて世界戦が見れるので私はウキウキしていた。しかも昨日はロイヤル小林がKOで世界チャンピ
オンになっている。「でも続けて勝てるわけねえか」とTVを見ていた。具志堅が世界に挑戦するファン・
グスマン(ドミニカ)戦のことである。
グスマンは小型フォアマンといわれ、21勝(15KO)1敗の戦績を残していた。しかも15KOの内、
11回は初回で終わらせている。具志堅は9戦目の選手にすぎない。格が違うのではないかとさえ思った。
だが試合になるとその予想は外れる。初回から打って出る具志堅。2Rから左フックを打ち抜くとグスマン
は大きく腰を落としてダウン寸前!具志堅は一気にラッシュしてグスマンを半分ロープからたたき出すダウ
ンをとる。このR終了間際にも連打して膝を付かせたがグスマンはゴングに助けられる。一方的な試合内容
であるが、グスマンのパンチで具志堅がふらつく場面も有った。だがチャンピオンの強打を恐れることなく
攻めたてた具志堅は4Rにもダウンを奪い、7RにKO勝ちする。日本人挑戦者がチャンピオンをこれほど
打ちまくったのには、ただびっくりした。ここから13度の防衛記録を打ち立てる「カンムリワシ」具志堅
王朝がはじまる。
具志堅には常にKO勝ちが要求された。3度目の防衛戦から8度目まで6連続防衛して、充分期待にこた
えている。考えてみると大変な記録だ。しかも初防衛戦と2度目の防衛戦で苦しい戦いを強いられたリオス
(パナマ)、マルカノ(ベネズエラ)を再戦でKOしているのだ。特に7度目の防衛戦となったマルカノ戦
はすばらしい試合で、グスマン戦に匹敵する内容である。この勝利は日本人の世界タイトル防衛の新記録で
もあった。
日本記録を更新したら今度は世界記録の更新である。当時、Jフライ級の防衛記録はルイス・エスタバが
持つ11度であった。そして新記録がかかる12度目の防衛戦の相手はチリからやってきた同級1位マルチ
ン・バルガス。フライ級の世界ランクに長期にわたり顔を見せている選手である。戦前は具志堅不利説もあ
った。バルガスはアマで153勝89KO6敗、プロで59勝38KO5敗3分けの戦績を残す猛者であっ
た。それとは別に試合を馬路かに控えたバルガスがとる食事の量に周りの人々はびっくりしていた。サラダ
一皿、パン9枚。ハムサラダ2人前、ステーキ300グラム、卵、フルーツ、コーヒー、野菜ジュース1リッ
トルコーラ2リットルと言った具合であった。食べ盛りの中高生でもこんなに食べられるだろうか?まして
やボクサーが!。何か不気味なムードを漂わせた挑戦者である。
試合は序盤バルガスが強打で追い、具志堅がスピードと技術でかわす展開となったが、バルガスの攻めは
単調で具志堅が試合をコントロールしている。5R具志堅は左ストレートでダウンを奪う。8R、ラフな攻
めを繰り返すバルガスに具志堅は左ストレートを当てコーナーに追いつめると、右から左のフックでダウン
を奪う。立ってきたバルガスを再び倒し、最後はロープ際で連打すると試合は終了した。強敵をスピードと
技術で翻弄した試合である。これで具志堅はこのクラスの防衛記録を打ち立てるのだ。
どんな強豪でもリングに別れを告げるときがやってくる。具志堅とて例外ではなかった。13度目の防衛
戦で苦戦したペドロ・フローレス(メキシコ)と再戦になった14度目の防衛戦で具志堅は打ちまくられ、
12Rにセコンドからタオルを入れられてしまう。故郷、沖縄での試合であった事は皮肉な事であった。
最近、具志堅対グスマンのビデオを見る機会があった。そのバランスのよさ。重いっきりの良いボクシン
グ、金平会長が具志堅を100年に一人の選手と言って売り出したあの頃の記憶が一瞬よみがえった・・・。

        
 
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